【観測記録_01】
- ヴィン

- 11月1日
- 読了時間: 2分
更新日:11月2日
これを「ブログ」と呼ぶことに、明確な意味はない。
形式がどうであれ、記録は記録以外の意味を持ち得ない。
だが、組織の外部にも断片的な観測を残すよう、所長から指示が下された。
理由は説明されていない。だが、理由の不在もまた観測の対象になりうる。
CLiFF EDGE inc. は、セントラル・サージ以降に発生した“構造の歪み”を扱う組織だ。
修復、調査、封鎖、再構成――どの行為にも一貫性はない。
それでも活動は続いている。この記録は、その継続の証明として残される。
俺はヴィン。肩書は「企画・全体統括」。
だが実際の職務は、組織そのものの挙動を観察し、必要に応じて修正すること。
観測の対象は、外部環境だけでなく、メンバー全員を含む。
タクトは演算領域の管理を担当。行動に合理性が欠けるが、出力結果に整合性がある。
スミカは秩序維持。彼女の判断基準は常に安定しているが、感情面での変化が観測される。
ミコは3つの人格に分かれ、それぞれが異なる業務傾向を示す。
バリノは予測不能。ノイズの発生源でもあり、同時に装置としても機能している。
この構成は、効率性よりも観測密度を優先している。
俺自身がここにいる理由も、そのためだ。
この記録に感情を含めるつもりはない。感情は誤差を生む。
だが、誤差を排除しきった瞬間、観測そのものが停止することを理解している。
ゆえに、この記録は矛盾を前提とする。
記録は保存の手段であり、同時に変質の始まりでもある。
この瞬間からすでに“観測対象”は変わり始めている。
CLiFF EDGE inc. の存在も行動も、ここに書き残すことで別の位相へと移行する。
それを「公開」と呼ぶならば、俺は今日、世界をひとつ分割することとなる。
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CLiFF EDGE inc. Observation Log




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