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粛清部隊。
その言葉すら、記録からは抹消された。
かつて政府には“汚れ仕事”を請け負う部門があった。
ノイズ感染の疑い、暴走の兆候、異常な脳波。
そういった「未確定の危険因子」を、証拠もなく“処理”する仕事。
スミカは、その最前線にいた。誰もが震える仕事を、彼女は無表情で遂行した。
彼女が活躍したのは、セントラル・サージ発生後の現場だった。
「やらなければ、もっと多くが死ぬ」。その言葉を何度も自分に呟きながら、人を殺めた。
罪悪感は感情の奥底で腐敗し、今や何も残っていない。
ただ、生き残っているという事実だけが、彼女を苛む。
“私は殺すことしかできない”。その絶望を抱いたまま、CLiFF EDGE inc.に拾われた。
守るなどという感情はない。安全管理など、方便だ。
彼女は今も、社内の「異物たち」を見張っている。
問題があれば排除する。誰よりも早く、冷静に、確実に。
それが彼女の唯一の存在価値。
すでに手は汚れきっており、もはや血の重みにも何も感じない。
だが、それでもただ一つ、彼女は願っている。
“誰か他の者が、自分より先に地獄に堕ちないように”。
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